1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 02:03:51.35 ID:iQPyanof0
その日の帰り道に、僕は猫を殺した。
野良だった。
縞の小さなその猫は、僕の足元に近寄ると一つ泣き声をあげた。
それが気に食わなかったのだ。
気づくと、そこには潰れた猫がいた。
頭蓋からは脳漿がはみ出て、体からは折れた骨が突き出ている。
濁った眼が、僕を見ている気がした。
気に入らなかった。
だから、その目をもぎ取って、僕は何度も踏みつぶした。
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 02:07:47.54 ID:iQPyanof0
日々は退屈。
誰もが思っていることだろうけど、僕はより深く思う。
('A`)「おはよう、内藤君」
机に突っ伏している僕に、彼は声をかけてきた。
ドクオ。彼はそう呼ばれている。
( ^ω^)「おはようお」
あいさつをされたのなら、返すのが礼儀だ。
それが正常な人の判断である。
('A`)「やけに眠そうじゃないか。どうしたんだい?」
( ^ω^)「ちょっと、根つめて勉強しすぎちゃって……」
僕が昨夜、勉強を遅くまでやっていたのは事実だ。
受験生なのだから、正常な判断である。
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 02:11:23.46 ID:iQPyanof0
('A`)「うわあ、流石は校内一の真面目さんだね」
( ^ω^)「ははは……いやいや」
僕は、果たして真面目なのだろうか?
ただ普通に、学生のやるべきことと正しい事をやっているだけだ。
学生は勉強が本分なのだ。
だから、僕は勉強をしていたまでだ。
それに、近い日には模試がある。
昨夜おそくまで勉強していたのはそのためでもあった。
('A`)「謙遜しないでよ。君は今や珍しいまでの常識人で真面目だって噂なんだぜ」
その言葉に、僕はまた当たり前だと思った。
校則は守るし、授業には毎日出ている。
風邪をひいたことだってない。
モラルや常識だって、人間なら誰にだって当たり前にこなすものだろう。
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 02:15:22.54 ID:iQPyanof0
( ^ω^)「ほら、そろそろ授業が始まるお。席に着くお」
ふと時計を見てから、ドクオにそう言う。
彼は流石だね、と言い残すと自分の席へと戻った。
予鈴が鳴る。ホームルームの時間だ。
_
( ゚∀゚)「おはよう皆」
担任のジョルジュ先生が、今日も元気そうに登場する。
ぶっとい眉毛はいつものように凛々しい。
_
( ゚∀゚)「よーし、内藤。号令」
( ^ω^)「はいお。起立」
僕はこのクラスの委員長も務めている。
だから号令や行事に関しては僕が進行を務めることが多い。
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 02:19:45.80 ID:iQPyanof0
_
( ゚∀゚)「最近、このあたりで野良猫の死体が目立ってきている。
もしかしたら、不審者が出ているのかもしれない。
お前たちも危険を避けて、なるべく遅い時間帯や一人で帰るのは避けろよ」
ホームルームで先生が出した話で、その話題が上がった。
猫の死体。最近、多発しているらしい。
物騒な世の中だ。危ない人はこれだから困る。
警察も何をやっているのだろうか。
_
( ゚∀゚)「さて、おっかない話で締めて悪いが、ホームルームは以上だ」
先のように、また僕が号令をかけてようやく朝のホームルームが終わりを告げる。
( ^ω^)「猫……」
猫。
頭によぎるのは、あの濁った瞳。
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 02:24:24.08 ID:iQPyanof0
退屈だ。学校もそれは変わりがない。
毎日は七限の勉強と休憩とご飯の繰り返し。
クラスメイトとは変わらないようで、しかし毎日違った会話の繰り返し。
勉強は予習と復習のお陰で卒なくこなすが、それも毎日の繰り返し。
登下校の家から学校、学校から家への行き帰りの繰り返し。
('A`)「しかし、物騒な話だよね」
( ^ω^)「何がだお?」
僕の前の席に座って弁当を食べるドクオがそうポツリと呟いた。
('A`)「食事中に何だけど、今朝、ジョルジュ先生が言ってただろう?ほら」
( ^ω^)「……ああ、例の猫?」
('A`)「うん」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 02:27:29.37 ID:iQPyanof0
にゃあ。短い鳴き声が、頭の中に響いた。
うるさい。
('A`)「異常だよ。動物を殺すだなんて」
ドクオが、珍しく語気を荒げている。
( ^ω^)「君は、猫が好きなのかお?」
('A`)「ああ、猫も犬も、カメレオンだって。動物は大好きだよ」
だからこそ、とまたも怒りを露わにする。
('A`)「許せない」
( ^ω^)「…………」
彼の怒る理由はよくわかる。
誰だって、生命が散るのには反感を覚えるだろう。
ましてや、自分の愛でる動物を殺されたとなれば怒りを覚えよう。
僕だって、怒れてくる。
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 02:31:37.39 ID:iQPyanof0
('A`)「内藤君は、どう思う?」
意見を僕に求めるのは、彼の癖だ。
きっと、自分だけの考えに自信がない表れだろう。
だが、今回は共感を求めようとしている。
( ^ω^)「僕も同意見だお。本当、犯人は最低だお」
僕は、常識人で優等生。
だから、モラルだってもってるし、常識だってわきまえてる。
何にしたって、有害な動物以外を殺すのには怒りを覚えるものだ。
('A`)「だよね!内藤君もそう思うよね!」
ドクオが歓喜の表情で声を高らかにそう言った。
彼の表情を見て、僕もにっこり。
('A`)「内藤君は優しいなぁ」
( ^ω^)「おっおっ」
そう、僕は優しいんだ。
誰にでもわけ隔てなく接するし、いつだってその人の意見を尊重してあげる。
その人の望む言葉だって投げかけてあげるし、望むこともしてあげる。
( ^ω^)「……にゃあ」
にゃあ。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 02:37:00.00 ID:iQPyanof0
家に帰ると、暖かい空気と美味しそうな匂いがお腹を刺激した。
匂いから、今日の晩御飯はカレーだと分かる。
スタスタと通路を抜け、リビングへと出ると母の姿があった。
J( 'ー`)し「あら、お帰りホライゾン」
エプロンを身にまとい、カレーを煮込む姿はまさしく母の鏡だと僕は思う。
穏やかな笑顔に僕はいやされ、食卓に腰を掛ける。
( ^ω^)「ただいま、お母さん」
J( 'ー`)し「おや、もう晩御飯にするかい?」
( ^ω^)「うんお。お腹すいたお」
はいはい、と母がキッチンへとまたも姿を消す。
次に現れたときには、その手にカレーの注がれたカレーライスを持ってきた。
( ^ω^)「美味しいお」
カレーの中に転がる大きめのジャガイモとニンジンをかみ砕く。
ほんのりとした甘味と、濃縮されたコクと絡みが口内を満たした。
熱い液体は喉を通るたびヒリヒリするが、それを僕は何度も求める。
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 02:39:13.80 ID:iQPyanof0
J( 'ー`)し「それで、勉強の方はどうだい?」
僕の前へと腰かける母は、そう尋ねる。
僕は頬張っていたご飯を飲み込むと、水で洗い流した。
( ^ω^)「相も変わらず順調だお」
J( 'ー`)し「そう!流石はホライゾンね!」
そう答えると、母は喜々とした。
そんな母の姿を見て、僕はにっこり。
どこかで、猫の鳴き声が聞こえる。
にゃあ。
うるさい
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 02:43:57.73 ID:iQPyanof0
( ФωФ)「ただいまである」
僕がご飯を食べ終えると同時に、玄関から父の声が聞こえてきた。
J( 'ー`)し「お帰りなさい、あなた」
( ФωФ)「ああ、ただいまである」
仕事帰りだと言うのに、その表情に疲れが見えない。
父、ロマネスクは僕の目標だ。
父は警察官をしていて、かなり上の立場を担っている人だ。
実力も頭もずばぬけていて、完璧な人間だ。
( ^ω^)「お帰りなさい、お父さん」
( ФωФ)「おお、ただいまホライゾン」
父が、僕へと顔を向ける。
( ФωФ)「晩飯を食べ終えたのなら、勉強しなさい。
そろそろ模試があるのだろう?
お前なら大丈夫だろうが、勉強は積み重ね。繰り返すことに意味がある」
期待しているぞ、と最後に声をかけると、父はお風呂へと向かった。
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 02:46:23.26 ID:iQPyanof0
カリカリ。鉛筆をノートに走らせる。
パラパラ。教科書を捲る。
( ^ω^)「あ……」
パキリ、と鉛筆の先が筆圧に負けて砕けた。
手が止まる。
( ^ω^)「……ああ、そうだ、コーヒー」
ふと時計を見て、時間が夜中の三時だと気付く。
椅子から立ち上がり、コートを羽織る。
財布をズボンのポケットに突っ込むと、部屋から出た。
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 02:49:50.88 ID:iQPyanof0
夜は冷える。もう直は冬も終わるだろうと言うのに。
僕はコンビニに入ると、いつものように缶コーヒーを買って店を出た。
今日は、飲みながら歩こう。
本当は、こんな非常識なこと、しちゃいけないんだけど。
けれど、ゴミを、空き缶を捨てなければいいんだ。
ゆっくりと、チビチビとコーヒーを傾けていく。
はあと息を吐くと、白い息が出た。
( ^ω^)「……あ」
にゃあ。
鳴き声がした。
僕の歩く通りの先に、白の猫がいた。
( ^ω^)「ああ」
コツコツと猫へと足を向ける。
白い猫は、逃げもせず、逆に僕へとすり寄ってきた。
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 02:52:15.77 ID:iQPyanof0
にゃあ。
はい。
にゃあ。
うん。
にゃあ。
違う。
にゃあ。
そうなの?
にゃあ。
( ^ω^)「にゃあ」
足を、それから話した。
白かった毛並みは、どす黒い血で染まっていた。
折れた脚はおかしな方向を向き、関節から骨が飛び出していた。
最後に、頭に足を乗っけようとした、その時。
濁った眼が、見えた。
( ^ω^)「……うるさいお」
鈍い音が響く。
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 02:56:15.40 ID:iQPyanof0
('A`)「あはは、それでs」
ドン、とドクオに誰かがぶつかった。
( ^Д^)「っち、おいこらテメエ、邪魔なんだよクズ」
('A`)「あ、ご、ごめん……」
( ^Д^)「最近、妙に元気そうじゃねーか。あ?」
ミ,,゚Д゚彡「おう、どうしたんだよプギャー?」
( ^Д^)「おう、フサ。最近さ、ドクオうざくね?」
ミ,,゚Д゚彡「そういやそうだな。しめるか?」
二人の生徒が、ずいとドクオに近寄る。
ミ,,゚Д゚彡「おいテメー。まーだ虐めたりねえわけ?」
( ^Д^)「キモクズゴミのドクオちゃーんwwwwww最近相手してあげなくてごめんねー?wwwww」
(;'A`)「あ……ぁ……」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:00:27.75 ID:iQPyanof0
( ^Д^)「んだてめ、その反応は!あぁっ!?」
一人の生徒、プギャーという奴がドクオの胸倉を掴んで凄んだ。
それをもう一人の生徒、フサという奴がニヤニヤしながら見ている。
( ^ω^)「……ちょっと、二人ともやめるお」
いい加減、僕の目の前で暴れられても困る。
僕はプギャーの肩に手を置くと、そう言った。
( ^Д^)「……ちっ。おいドクオ、内藤に感謝しろよ?」
ミ,,゚Д゚彡「けっ、そろいもそろってうぜえやつら」
肩を怒らせて、彼等はどこぞへ行ってしまった。
いつのまにか静まっていた教室に、また声が蘇る。
けれど、その話題は、いやなものだ。
「気持ち悪いよね、あの二人……」
「いや、ドクオはもとからじゃん」
「でも、内藤ってさ……」
「あー、わかる……なんていうか、あれなんだよね……」
「ねー……」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:03:51.06 ID:iQPyanof0
( ^ω^)
僕は常識人。僕は優等生。
僕は、いつの日かのことを思い出す。
確か、数日前のことだ。
所謂リンチといわれるものを受けていたドクオを、僕は常識観点から救い出した。
もともと、彼はクラスだけでなく学年から嫌われていて、暴力を受けているのもよく見かけていた。
そんな彼を見かねて、僕は今まで振るったことのない拳を振るったのだ。
それは決して傷つけるためのものじゃない。守るためだ。
結果からいえば、今の現状通り。
僕は見事ドクオを救い出し、以降苛めを防いだ。
そう、僕は常識人で、優等生だから。
だから、やるべきことを。
にゃあ。
うるさい。
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:06:54.20 ID:iQPyanof0
( ^ω^)「次は、移動教室かお」
すっ、と席を立つ。
いつもならドクオが僕のもとへ来るのだが、彼がいない。
きっと、先に教室に向かったのだろう。
そうだろう。
席を立つ。歩く。教室から出る。
廊下を歩く。話声が聞こえる。
視線を感じる。
「うわ、内藤だ……」
「やっぱ、なんか気持ち悪いよな……」
「うん、なんか、あれだよね……雰囲気って言うか……」
( ^ω^)
僕は常識人で、優等生。
そうさ、僕は、モラルや常識があるからさ、何だって受け入れるよ。
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:10:53.49 ID:iQPyanof0
授業が終わっても、ドクオの姿はなかった。
( ^ω^)「うー、といれといれ」
休み時間、尿意を感じた僕はトイレへと向かう。
やはり話声が絶えない。
にっこり。にゃあ。
( ^ω^)「あ」
トイレにつくと、そこにはドクオがいた。
しかし、普段の、生徒としてのドクオの姿はない。
征服を来ていないし、ネクタイもしていない。
パンツもはいていなかった。
体の至るところには、痣があり、顔面はひどい様子だった。
(;:#)A;)「うっ……うぅぅうぅ……」
泣いている姿に、僕は少し呆然とする。
しばらくして、僕は手を差し伸べた。
なんたって、僕は常識人で、優等生だから。
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:14:26.56 ID:iQPyanof0
その後、保健室へと連れて行ってやり、彼をベッドで休ませることにした。
(;:#)A;)「何で……何で僕がこんな目にあわなければならないんだ……
ただ僕の顔が、気色が悪いだけじゃないか……だからって暴力が許されるのか……
人を傷つけていいと言うのか……もう嫌だ……」
呪詛は果てしなく続く。
僕はその言葉に返事を返すことはしない。
今はきっと、彼は文句を言いたいのだ。
会話をしたいわけではないのだ。
僕にはわかる。僕は、そう、常識人で優等生だから。
(;:#)A;)「ううう……」
( ^ω^)
憎い?
にゃあ。
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:18:03.12 ID:iQPyanof0
家に帰る。
今日は宿題がたくさん出た。
だからご飯も簡単に済ませて、父が帰るよりも早く部屋へと戻り勉強を始めた。
カリカリ。ノートに鉛筆を走らせる。
パラパラ。教科書を捲る。
( ^ω^)
文字の羅列。これに意味はあるの?
何を思っているんだい、僕。意味はあるに決まっているじゃないか。
僕、どうしたんだい。僕は常識人で優等生なのだろう?
勉強に意味はあるじゃないか。父を見ろよ。
彼は優秀だ。完璧だ。
そんな彼に期待を抱かれているのだから、頑張らねば。
先生方だって、僕にそう言っていたじゃないか。
ジョルジュ先生なんて、うちの学校じゃら東大生が、なんて騒いでいるじゃないか。
頑張らなきゃ。みんなのために。そうだ。僕は
( ^ω^)「あ」
鉛筆の先が、砕ける。
そうだ、コ-ヒーを、買おう。
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:21:55.81 ID:iQPyanof0
( ^ω^)
夜になると、僕はいつもコーヒーを飲む。
それは、眠気覚ましのためだから。
睡眠時間は、一日二時間。
残りは勉強と学校。
予備校に通う暇があるなら自分で勉強をした方がいい。
そう言われて、父にこのスケジュールを組まれたのは何年前だっただろう。
それでも、僕は受け入れた。
期待にこたえなければ。父も母も、僕に期待を抱いているのだから。
がんばらなきゃ。
( ^ω^)「にゃあ」
路地裏に、か細い呼吸が聞こえる。
猫。野良猫。僕の足元の。
何度も踏みつけた。死なないよう、それでも死ぬように加減して。
何度も何度も。
口から血がにじみ出ている。きっと内臓が破裂したんだろう。
それでもまだ呼吸は続いていた。
だから、足に力を込めて、思い切り踏みにじった。
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:26:03.15 ID:iQPyanof0
_
( ゚∀゚)「……ドクオは、しばらく休むことになった」
次の日。昨今の野良猫の死体の増加の話の後、ジョルジュ先生がそう言った。
_
( ゚∀゚)「インフルエンザにかかっちまってな。気の毒に……」
そうか、ドクオはインフルエンザにかかってしまったのか。
それは大変だ。
お見舞いにいこうにも、無理だろう。
休み時間を一人で過ごす。
昼休みを一人で過ごす。
お昼ごはんを一人で食べる。
水を一人で飲む。
にゃあ。
黙れ。
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:29:23.82 ID:iQPyanof0
J( 'ー`)し「おかえりなさい、ホライゾン」
ああ、ただいま、お母さん。
J( 'ー`)し「あれ?今日は何かあったのかい?」
どうしてそう思うんだい?
J( 'ー`)し「なんかね、いつもと少し違う気がするのよ」
そうかい?でも、僕はいたって普通だし、今日は何もなかったよ。
J( 'ー`)し「勘違いかねぇ?それより、ご飯どうする?」
ああ、今日も勉強に集中したいから、上で食べるよ。
J( 'ー`)し「おや、珍しいねぇ、ブーンが一人で食べるだなんて」
そうかい?とにかく、後でご飯を持ってきてくれるかい?
J( 'ー`)し「ああ、わかったよ」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:32:00.29 ID:zpgvt0wX0
ご飯を頬張る僕の耳に、父の声が聞こえてくる。
「ただいまである」
「おかえりなさい」
「おや?ホライゾンは?」
「上で勉強しているよ」
「そうかそうか。あいつには頑張ってもらわないとな。
何しろ、吾輩の息子なのだから」
「そうですね、あの子は貴方の息子ですから」
「まあ、あいつに限って失敗はないであろう。
それより、お風呂入るである」
「はいはい」
( ^ω^)「……にゃあ」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:34:35.01 ID:zpgvt0wX0
僕は、頑張っているのだろうか?
いや、まだまだだろう。きっと、こんなことでは父の足元にだって及ばない。
父のような完璧にならねば。
僕は、期待されているのだから。
勉強しなくちゃ。
もっともっと頭を良くして、東大に首席で入って、警部になるんだ。
父だって、できたことだ。
僕にできない道理があるものか。
けど、僕は父を越えれるのだろうか。
分からない。
分からないから、鉛筆を握る。
( ^ω^)「にゃあ……」
最近、独り言が増えた気がする。
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:37:05.60 ID:zpgvt0wX0
夜になる。
コーヒーを飲む。
猫殺す。
家に戻って。
また勉強。
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:38:23.59 ID:zpgvt0wX0
朝になる。
ご飯を食べて。
学校へ。
一人で過ごし。
一人で帰る。
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:40:59.79 ID:zpgvt0wX0
一週間がたったころ、ドクオが登校してきた。
('∀`)「おはよう、内藤君」
どこか、妙な雰囲気を感じた。
棒は優等生で、常識人だから。
人の変化だって分かるんだ。
( ^ω^)「おはようお、ドクオクン」
僕はこの時、初めて彼の事を名前で呼んだのだろう。
妙な違和感を自分で感じた。
( ^ω^)「インフルエンザ、大変だったおね」
本当に?
分かってる。
考えるな。
もう、いい。
にゃあ。
にゃあ。
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:43:37.59 ID:zpgvt0wX0
('∀`)「内藤君。僕はね、もしも生まれ変わるのなら、野良猫がいい」
もう、いい。
( ^ω^)「それは、何で?」
もう、いい。
('∀`)「彼等は、いつも独りぼっちだ。自由気ままに生きていられる、実に羨ましいよ」
もう、いい。
( ^ω^)「そうかお」
もう、いい。
('∀`)「ごめんね、今まで」
もう、いい。
いいんだ、ドクオ。
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:46:59.70 ID:zpgvt0wX0
教室に、妙な空気が流れていた。
きっと、皆わかったんだ。
それを本能で感じ取ったんだろう。
('∀`)「内藤君、君は、猫のような顔をしているね」
( ^ω^)
('∀`)「なのに、そういう生き方をしないんだ」
('∀`)「気持ちが悪いんだ、君は」
('∀`)「まるで機械のような雰囲気」
('∀`)「表情はいつだって無で、喜怒哀楽がないんだ」
('∀`)「君は、異常だよ」
ドクオが、窓へと近寄った。
('∀`)「僕は知っているよ。君のしていることも」
('∀`)「君が何を思っているのかも」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:48:43.11 ID:zpgvt0wX0
('∀`)「見たんだ。僕は」
('∀`)「君が、しているところをね」
( ^ω^)
にゃあ
('∀`)「ねえ、最後にいかい」
( ^ω^)「何かお」
('∀`)「君は、僕を引きとめてくれるかい?」
ドクオの足が、窓の淵にかかる。
悲鳴が聞こえた。甲高い、女子の悲鳴だ。
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:50:56.17 ID:zpgvt0wX0
「お、おい!誰か止めろよ!」
「ヤバイって!マジでやばいよ!!」
「きゃあああああああ!!」
僕は、常識人で、優等生なんだ。
僕は、モラルがあって、常識がある。
だから、僕のするべき行動は、彼を引きとめることだ。
けど。
( ^ω^)「君が望むのなら」
('∀`)「やっぱりだ。だから君は異常なんだ」
ドクオの姿が、窓の外へ消えた。
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:53:29.37 ID:zpgvt0wX0
全部、きっと、わかっていたんだ。
僕は、異常だった。
そうさ。
親からうけたその期待も、何よりも勉強を優先するところも。
きっと、だからだ。
僕が無機質になったのは。
そのうち、全部どっかいった。
全部壊れた。
欲しいものがなくなった。
いらないものが消えた。
友達がなくなった。
感情が消え去った。
全部壊れた。
猫になりたかった。
僕は、猫に似ているから。
父も、猫に似てた。
やはり、親子だ。
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:54:59.37 ID:zpgvt0wX0
猫になりたかった。
自由になりたかったんだ。
だから殺した。
僕は猫を殺した。
羨ましかった。
彼らが羨ましかったんだ。
だから殺した。
気に食わないから殺した。
僕はなれないから殺した。
僕は異常だから殺した。
( ^ω^)
けど、もう、我慢の限界だ。
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:56:29.30 ID:zpgvt0wX0
ドクオは言った。
今の僕は異常だと。
なら、その柵も全て、僕は押しのけて正常になろう。
猫になろう。
自由になってやろう。
僕は猫なんだ。
自由だから、何だってできる。
今まで抑えていたものも、すべてやってやろう。
そう、僕はいま、正常になった。
( ^ω^)
にゃあ。
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 03:59:18.59 ID:zpgvt0wX0
( ФωФ)「……ああ」
全てが崩れた気がした。
我が息子が、こんなことをするとは、思いもしなかった。
「警部、しっかり!」
( ФωФ)「………あ、あ」
「警部……」
全部崩れた。そう、崩れたよ。
俺の、今まで手塩に育てた子供が、これだ。
やはり、壊れた。
耐えきれると思っていた。
けど、ダメだった。
息子は、潰れてしまったのだ。俺の期待に。柵に。
だれの責任だろうか?
( ФωФ)
俺?
違う。
あいつがそうなっただけだ。
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 04:02:20.81 ID:zpgvt0wX0
「昨日、午前十時ごろ、都内VIP高校において、無差別殺人事件が発生しました。
死者十二名、重傷者十名という被害をもたらしたのは、何と同校生徒の男子でした。
少年はカッターナイフで次々と切かかり、職員が数名で取り押さえたところ、ようやく止まったとのこと。
なお、事件発生寸前、少年のクラスでは飛び降り自殺が起きた模様で、どうやら少年は
それにより、何らかの――」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 04:04:12.04 ID:zpgvt0wX0
僕は猫になりたかった。
ずっとなりたかった。
ただ、自由になりたかった。
この身にまとわりつく異常の柵も、全て解き放って。
僕は、猫になりたかった。
猫になったとき、世界は変わった。
退屈なんかじゃない。きっと、これは刺激であふれているんだ。
だから、猫になった。
遠くで、鳴き声が聞こえる。
end.
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/04(水) 04:05:26.76 ID:zpgvt0wX0
お疲れ様、ながらはやっぱり疲れるね
っていうかもうこんな時間か、やばいな
83 名前: ◆EYa/H5FhY2 :2009/02/04(水) 04:08:40.13 ID:zpgvt0wX0
酉は出した方がいいのかな?
とにかく付き合ってくれた人、ありがとう
よい夢を